最近朝の挨拶しない人が増えている。
こちらから挨拶をして始めてびっくりした様に静かに、ちいさく挨拶を返す。
悪気はない。気がつかないだけである。
エレベーターの扉が開くと周りに対して“気配り”をせずに無神経に乗る人、出るひとが増えている。
狭い歩道ですれ違うとき、避ける素振りもせずそのまま闊歩してくる人が結構いる。
周りに対する不注意というよりも周りを“意識していない”周りが“見えていない”と言った方がよい。
周りに対して“気を配る”とはもともと“用心”のためである。
よくアメリカ人は愛想が良いと言われる。見知らぬ人に対しても結構、親しそうに“ハロー”と挨拶をする。
これは基本的に見知らぬ相手への用心からである。
こちらからメッセージを発信し、相手を探る。挨拶だけではない。
言葉に出さなくても人は絶えずメッセージを発信している。
彼女が不機嫌そうであれば、機嫌が直るまで寄り付かないほうが良い。
上司が上機嫌であれば、承認を取るチャンスである。
相手の発信しているメッセージを絶えず読み解くことによって人は相手に対するアプローチを決めている。
「触らぬ神に祟りなし」である。
メッセージを読み解く能力は知覚機能の中でも最も重要な能力である。
“危険”に対する防御能力であると同時に“機会”をものにする攻撃能力でもある。
相手のメッセージを読み取れるかどうかは相手の立場に立てるかどうかの問題である。
人間の社会で対応力とは相手視点に立てるかの能力の問題である。
自己視点でしか物事が見えない人が増えている。
相手の視点で考えることができないという事は相手のメッセージに対して無防備であると言うことである。
メッセージに対する免疫性がない。
相手のメッセージに踊らされる。
メッセージ免疫性低下の無自覚症候群が今確かに日本人の間で広がっている。
*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。
~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~
田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。
☆twitterアカウント:@ShinTanaka☆