2023年9月25日月曜日

コミュニケーションは人を元気にする

 日々のコミュニケーションを疎かにせず、大事に意識していくと人は元気になります。

落ち込んでも回復することが容易になります。人間にとってコミュニケーションというのは単なる伝達手段だけではなく、元気を維持する一つの能力と考えることが大事です。

それには、コミュニケーションのカラクリを知ることが大切です。

コミュニケーションと言うと発信と考える人が多いのですが、コミュニケーションは全て「受信」から始まります。受信から「発想」、そして「発信」へと。このサイクル(受信→発想→発信)がコミュニケーションの基本プロセスです。これは人間の日常の基本動作です。意識しようがしまいが、此のプロセスを回しながら人は生きています。重要なのは此の一つひとつのプロセスをどれだけ意識するかです。

 

では、どう意識するか。先ずは、「受信→発想→発信」を「Inspiration → Imagination → Elaboration」とより能動的な英語表現に置き換えます。

 

例えば、受信=Inspirationには単なる受信を超えて、‟ひらめき”や‟共感”といった要素が含まれます。今まで気づかなかったことがわかる。見えなかったものが見える。感じなかった事が知覚できる。更には、そのことでワクワクしてくる。これらの要素を「受信」は持ってます。

ここで重要なのは、物事に関心を持つことです。日常的に我々は様々な事象や出来事に出逢います。

そこには驚きや想定外なことが多く起こります。それらの一つひとつのことに関心を持つことが受信力を上げInspirationを生み出します。今、目の前で起こっていることに大いなる関心を持つことです。

 

発想=Imagination は人間を人間たらしめているものです。人間はイメージの動物といっても過言ではありません。見えないものをイメージとして捉え、新たな意味づけを行うことができます。

Inspirationを契機に、それをより具体的ににしていく(構想する)のがImaginationです。人によって描くは様々です。動画もあれば、ポンチ絵もあります。

立体的でもあり、時空を超えている場合もあります。この抽象的な発想をより現実的な視座に落とし込んでいく過程がImaginationです。

Steve Jobsの名言である「Connecting the Dots」においてConnectするのがImaginationの役割です。Albert Einsteinも「Imagination is more important than Knowledge」と断言しています。

一見、異なるものをどう繋ぎ合わせイメージ化していくかが鍵です。

 

発信=ElaborationImaginationによってイメージ化されたものを表現することです。Elaborationには「外に向けて入念に仕込む」と言う意味合いがあります。人間には「表現欲求」があります。イメージが一つの形に仕上がると、それを「表現したい」という欲求が生まれます。

外の相手に向けて入念に言語と非言語で表現をつくり、相手に伝わる工夫をすることが発信です。その時に気をつけなければならないのが、相手に「伝える」ではなく、相手に「伝わる」ということです。残念ながら人間社会は「伝えれば伝わる」という世界ではありません。「伝わるには、それ相応の努力と創意工夫が不可欠です。

 

受信→発想→発信のコミュニケーションの結果物が「表現」です。人間は表現する動物です。様々な表現を通じて日々の日常生活を生き抜いています。食や呼吸のサイクルと同じようにコミュニケーションとは人の生存を維持・確保するためのサイクルです。

このプロセスをより能動的に意識することによって、「感じて喜び、イメージして楽しみ、表現してワクワクする」ことができるのです。

コミュニケーションとは何か?

 「コミュニケーション」という言葉は実に頻繁に生活の中で使われています。

何か漠然として明確な答えが見つからない時は、概して「それはコミュニケーションの問題だ。」と言って片付けてしまう。お茶を濁してしまうことが多々あります。

便利な言葉ではありますが、かなりいい加減に使われています。このことは裏返せば、人間の悩みは、何らかの形でコミュニケーションの問題と絡んでいるということです。

40年以上にわたりコミュニケーションの世界で仕事をしてきました。様々なリーダーや組織と関わり、数多くのコミュニケーションの修羅場を潜る中で、最近、日々感ずることは人がコミュニケーションの本質をもっとしっかりとわきまえれば、より「人生の有り様が好転してくる」「効果的な解決法を見出すことができる」「不可能が可能になる」「悩みより喜びが増える」結果、「人生をもっと意味あるものにできる」ことを強く思います。

何故、これほど大事なものであるコミュニケーションのカラクリをも知らずに人生を日々過ごしているのか。実に「もったいない」と痛感しています。

所詮、人間の世界、コミュニケーション無しでは成り立ちません。

戦略コミュニケーション・ブログは2011年に立ち上げましたが、201924日以降更新せず、休眠状態でした。

このほど、再度、スタートする背景には、やはりこの「もったいない」という気持ち。そして1人でも多くの人にコミュニケーションの秘めたる力を知ってもらいたいと言う思いからです。コミュニケーションは人がこの世で「生き抜いていく」ために天が授けてくれた凄い力です。

2019年2月4日月曜日

ニュース 田中愼一が登壇したパネルディスカッション「ゲームチェンジの時代にリーダーはどうやって『信念』『ぶれない軸』を維持すべきか?~石橋義×田中利典×鎌田英治×田中愼一」のビデオが公開されました

11月25日に開催されたG1経営者会議2018に弊社の田中愼一が参加させていただきました。
是非ご確認ください。

パネリスト(肩書は2018年11月開催時当時)
石橋 義 株式会社JOLED 代表取締役社長
田中 利典 金峯山寺 長臈/種智院大学 客員教授
田中 愼一 フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役社長/グロービス経営大学院 教員

モデレーター
鎌田 英治 株式会社グロービス マネジング・ディレクター/知命社中代表

ゲームチェンジの時代にリーダーはどうやって「信念」「ぶれない軸」を維持すべきか?~石橋義×田中愼一×田中利典×鎌田英治

2018年8月6日月曜日

【メディア情報】田中愼一が登壇したパネルディスカッション「リーダーに必要な『心構え』『判断軸』『仕事観』」のビデオが公開されました

6月24日に開催されたG1新世代リーダー・サミット2018第4部全体会「G1-U40へのメッセージ」にて「人を動かすリーダーに必要なもの」に田中愼一が参加させていただきました。
第一線でご活躍されているリーダーの皆様とのコラボレーションを是非ご確認ください。
パネリスト
星野 佳路  星野リゾート 代表
森 まさこ  参議院議員
田中 愼一  フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役社長/グロービス経営大学院 教員
モデレーター
高岡 美緒  株式会社メディカルノート 取締役 事業開発・人事広報部門・コーポレート部門管掌 Arbor Ventures パートナー

リーダーに必要な「心構え」「判断軸」「仕事観」とは?~田中愼一×星野佳路×森まさこ×高岡美緒

2018年6月5日火曜日

人生100年の時代、どう「強かに」変身し続けるか ~戦略コミュニケーションの視座~

自分に毎日語り聞かせるストーリーを持つ
「ライフ・シフト」100年時代の人生戦略という本がある。少子高齢化の最先端を行く日本では話題になった本である。
これまでは多くの人々が「教育→仕事→引退」というシンプルな生き方がひとつの常識だったが、長寿化によってより“マルチ・ステージ”の中で人生のライフ・モデルを模索する時代になる。
仮に60歳で会社を引退しても、残りの40年をどう生きるかは高齢者だけの問題はない。人生100年の時代を生きる全ての世代に共通する課題である。そこではそのステージごとに「変身」を続け、「強かな立ち位置」を作っていくことが必要となる。

それは人生のストーリーを絶えず書き換え進化させることを意味する。
ストーリーは人に語るものではない。自分に毎日語り聞かせるものである。それが自分に元気と活力を与え、行動を喚起させるのである。行動こそ状況を動かす最大の表現である。自分が行動しない限り周りは動かない。
自分のストーリーを持つことによって行動という表現力を持つことが結果として、マルチ・ステージにおいて十分耐え得る立ち位置をつくる。禅の言葉である「融通無限自由自在、随所に主となれば立処皆真なり」という境地に近づく。

知識の過剰摂取は足かせになる。右脳を鍛える
最近、このライフ・シフトを実現させるための中高年向け研修が流行っていて、多くの企業がその導入に動いている。この風潮は「働き方改革」推進という枠の中でますます強まっていく。この手のものが今後たくさん出てくる。
しかしながら、多くの研修が知識習得型のものになっている。左脳偏重の内容になっている。絶えず、新たなステージで自分の立ち位置をつくるものは「知識」ではない。AIがどんどん広がっていく世界では知識は陳腐化する対象でしかない。

強かな立ち位置で変身し続ける
立ち位置をつくる時に最も求められるのが精神的エネルギーである。平たく言えば、“元気”を得ることである。知識をどんなに積み上げても“元気”は出てこない。逆に知識の過剰摂取は、感受性を弱体化させ、立ち位置をつくる上で最も重要な感覚する力=受信力を弱める。“元気”を減退させるのである。
人生の新たなステージ開拓にはそれ相応の精神的的エネルギーを必要とする。自分の“元気”をどうこれから確保していくかが勝負になる。ところが、人間は歳をとるに従い身体的能力が低下する。厄介なのは、身体の衰えは精神的エネルギーの供給にも影響する。
個人差はあるが一般的に60代の大台に乗ると精神的エネルギーの減退は加速する。ここをどう乗り越えるかがライフ・シフトにとって最大の壁である。42キロを走るフルマラソンではよく“心が折れる” ということが起きる。これは身体の限界が精神的エネルギーの供給をも止めてしまう現象である。ところが、70代、80代になっても旺盛さを失わないビジネス・リーダーは多い。これらのリーダー達に共通するものは、仕事や人生のステージごとに強かに変身し続けることを可能にする精神的エネルギーを十分確保していることである。

強かな精神性を支える「生」と「死」のハイブリッド・エンジンを持つ
何故、彼らは変身し続ける元気とエネルギーを確保しているのか。
ひとつ言えることは、「自分との対話」を常時欠かさないことである。経験を積む、特に成功体験を重ねてきた人が陥る最大のリスクがその世界観の固定化である。成功体験も一旦はご破算にしないと様々な事象を凝り固まった経験のフレームワークの中にはめ込もうとする。これに傲慢さが加われば今起こっている事象の本質を全く取り違えてしまう。
「強かさ」に変身を遂げているリーダーは、“自分の心をゼロにする”何らかの“儀式”を使って自分との対話を毎日工夫している。
ふたつ目は、その強かな精神性を支えるため「生」と「死」という2つのエンジンを稼働させパワーを得るということである。
人間は生まれてから中年層までは「生」というエンジンからのパワーで躍動する。ところが中年以降になると、自ずと「生」のエンジン・パワーは低下して行く。鍵はその低下した分をどこから補うかである。自分との対話の中で「死」と向き合い“覚悟する”。これが精神的エネルギーを補給する。所謂、ハイブリッド・エンジンである。
「死」をもレバレッジする「強かさ」である。日本にはこの伝統がある。武士道の要諦を説いた「葉隠」の“武士道と云うは死ぬ事と見つけたり”という有名な一節がある。“死を見つめて、今を必死に生きる”この発想が中高年に求められてくる。

2018年2月13日火曜日

【メディア情報】 田中愼一が登壇したパネルディスカッション「人を動かすリーダーに必要なもの」のビデオが公開されました

昨年11月3日に開催されたG1経営者会議の第3部分科会Dにて「人を動かすリーダーに必要なもの」に田中愼一が参加しました。
複雑化が加速し、不確実性が高まる現代において、リーダーに必要不可欠なものとは何か。下記より是非ご覧ください。

モデレーター
漆 紫穂子学校法人品川女子学院 理事長 中等部校長

日色 保 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 代表取締役社長
松山 大耕 臨済宗 大本山妙心寺 退蔵院 副住職
田中 愼一 フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社 代表取締役社長

人を動かすリーダーに必要なもの~日色保×松山大耕×漆紫穂子×田中愼一

2017年12月5日火曜日

コミュニケーションを極めて行くと「強かさ」の本質が見えてくる:戦略コミュニケーションの視座から考える

コミュニケーションを極めて行くと「強かさ」に行き着く。戦略コミュニケーションの発想とは「強かに」生きるための発想である。人間は基本的に3つのことしかできない。「感じる」、「発想する」、「身体を動かす」。“言葉を語る”のも行動である。その行動の一つひとつが周りを動かし、世の中に影響する。結果、自分の人生も動いていく。
戦略コミュニケーションの発想では、この人間の3つの働きを「受信・戦略・発信」と言い換える。つまり、人間活動とはコミュニケーションそのものとなる。そして、コミュニケーションの巧拙が人間活動の「強かさ」を左右する。コミュニケーションは神様が人間に授けた強かに生き抜くための生存力と言っても過言ではない。しかも、コミュニケーションを強かさのパワーとして発揮するための潜在的資質は誰もが持っている。要はそれらをどう覚醒させていくかが勝負である。

ところが、世の中を見ると、強かに生きている人もいれば、そうでない人など千差万別である。この差はどこから来るのか? それは、ズバリ「受信」のところで勝負が決する。つまり、何を感覚するかで、何を発想するかが出てくる。何を発想するかでどう行動するかが決まる。重要なのは眼の前で起こっている事象・事態をどう感覚するか、そこで独自の世界観を持てるかどうかが出発点となる。それによって独自の発想が生まれ、最終的には行動としての「強かさ」を紡ぎ出す。自分の感覚を磨き鍛えることが人生を面白くする。

そこで、強かな“感覚”をどう鍛えるかについてひとつの工夫を紹介したい。

心を“ゼロ”にする
コミュニケーションの要諦は相手を知ることである。完全に相手の身になって発想することができれば相手を動かすことは容易になる。
ところが相手を知ることを一番邪魔する最大の敵は自分である。
自分の好き嫌い、偏見、思い込み、利害などの“煩悩”が邪魔して、相手を知ることを阻む。実績をあげて成功すればするほど自分の我儘度合に拍車がかり相手を素直に受け入れられなくなる。自分の“心”ほど自由にならないものはない。
思い込みは、ある意味ブレないリーダーに取っては重要な資質でもあるが、一方で相手を知る上での障壁ともなる。ここをどうバランスをとるかが肝要になる。そのために自分の心をマネージすることが大切になってくる。相手との対話の前に先ずは自分との対話が重要になる。
それには心を“ゼロ”にする工夫を考えることである。すると相手が見えてくる。「見える」というより「観える」。相手の背後にある見えない風景が鮮やかに観えてくる。そもそも“空気を読む”とは見えないものを見抜くことである。相手がどのような視点や発想をもっているのか。どのような世界観を抱いているのか。どのような相手から影響されているのか。どのような課題を抱え込んでいるのか。それにどう対応しようとしているのか。などなどがジワジワと見えてくる。

概して、優れたリーダーは自分との対話のために必ず何らかの“儀式”を持っている。独自の儀式によって心を“ゼロ”にする工夫をしている。
石川播磨重工、東芝を再生、経団連会長になった“メザシの土光さん”の異名を持つ土光敏夫氏などは早朝お経を唱え、メザシの朝食を摂る。
これが土光流の儀式である。早朝ランニング、呼吸法、ストレッチ、茶道など身体を動かす儀式などは良く聞く話である。
ある業界大手のトップは「スケジュールを書かない手帳」をひとつの儀式にしている。手帳に気づいたこと、新たな発想や経験、感動したことなどを毎日こまめに書き綴って行く。1年経つと新たな手帳を購入、今度は古い手帳の1年前の日付の内容を新しい手帳に書き移す。もちろん、取捨選択をしながら書き移し、新たな発想や考えは書き加える。これは1年前の自分との対話である。

もうひとつ面白い例を挙げる。2005年、俗に言う「郵政選挙」に財務省を辞めて立候補するも落選、2009年の政権交代選挙に当選するまでの4年間地元行脚をした政治家の話である。先輩議員から「お前は人を見定めるきらいがある」と忠告される。財務省での仕事柄、人と会うと自動的に相手を見定めてしまう。これが非言語で相手に伝わり印象を悪くする。そこで考え出したのが「ラブラブ光線」である。
応援者の方々に挨拶行脚する際にこのラブラブ光線を放射するのである。相手がドアを開けた瞬間に放射する。どんな人が出てこようが「I LOVE YOU」と心に言い聞かせ放射する。これはなかなかの難業である。しかし、彼は6ヶ月でこの「ラブラブ光線」を完成させる。
心の底から思い込むと不思議なもので非言語を通じて相手に伝わる。人間は初めの10秒で初対面の相手の印象を決めてしまう。最初の10秒で相手に好印象を残すことが重要である。

「世界は我々が見ているものであるが、しかし同時に“我々は世界の見方を学ばなければならない”」
「ヘーゲル以降」を生きる哲学者として異名をもつM.メルロ・ポンティの言葉である。
欧米化、グローバリゼーションの風潮の中で、世界に勝つための方法論だけでなく、世界観までも借り物になっている日本のリーダーが目立つ。一見、聞こえの良い世界観を唱えるが、中身はグローバルから借りてきた横文字の言葉で羅列されているだけである。
方法論は客観的に判断、取捨選択をすれば良いが、それらを使い何を実現するのか、それによって何が変わるのかという自分の世界観は借り物ではダメである。強かさの本質は先ずは自分の目の前で起こっていることをどう見るかである。そこが借り物では全てが崩れる。感覚を磨く。事態を直覚する。知識の呪縛を排除する。自分の心をゼロにする。ここに強かさを発揮する真理がある。