ロビイングの権利が憲法で保障されているという事実は驚きであった。
「政府にモノ申す」ことが国民の権利だと規定しているようなものである。
確かに民主主義の基本を考えれば、政府が民意を軽んじれば政府に国民が苦情を申し立てる(right to petition government)ことは当然と言えば当然。
その延長線上に「民から官にモノ申す」というロビイングの発想が生まれ、
アメリカの民主主義社会を支えるひとつのしくみとなっている。
アメリカは政府に対して“性悪説”を持っている。
だから「民がしっかりしないととんでもないことになる」と言った発想が根強い。
日本は政府に対して逆に“性善説”をとる。「官がしっかりしないといけない」と。
いずれにせよ、そこにロビイストという優秀な人材が集まり、コンサルテイングのひとつの柱ができる。
日本ではロビイングは誤解されている。
水面下で裏情報ばかりを扱い、政策に影響を与える仕事のようにイメージされている。
実際は情報開示の徹底とプロセスの透明性がアメリカのロビイングを成り立たせている。
(つづく)
*「戦略コミュニケーションの温故知新」。このシリーズでは一度、原点回帰という意味で私のコミュニケーションの系譜を振り返り、整理し、そこから新たな発想を得ることが狙いです。コミュニケーションの妙なるところが伝えられれば幸いだと考えます。(前回はこちらから)
~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~
田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。
☆twitterアカウント:@ShinTanaka☆
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