2016年12月2日金曜日
戦略コミュニケーションの奥義、“自分との対話を制する”(後編)
夏目漱石の「草枕」の冒頭の文章が示唆に富む
「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」
智に働く、情に棹さす、意地を通す、すべて自分である。ここを抑えれば、とかくに人の世は住み易くなるのである。
リーダーは“儀式”で心の呪縛を粉砕する
人間は思い込みの動物である。思い込みがないと人生生きていけない。重要なのは“適切な”思い込みを持つことである。
仏教では思い込みを妄想×煩悩と言う。何を妄想×煩悩するかによって心の呪縛が生まれることを説く。よって妄想や煩悩をコントロールすることで心の呪縛を解くことができる道理である。自分との対話力を培い妄想×煩悩を飼いならすことが仏教の考え方である。ただ、妄想×煩悩とは猛獣のようなもので、下手するとこちらが喰われてしまう。如何に飼いならすかは至難の技と考えた方が良い。
甘く見ないことである。多くのリーダー達が自分の中にある“猛獣”を躾けるため必死に創意工夫を凝らし“自分との対話”を実践している。いわゆる“儀式”を持っている。自分との対話の“ルーティーン”である。
その内容は様々である。ジョギングをする、ジムで筋トレをやる、夜中に密かにヨガに入る、早朝にお経を唱える、茶道を嗜むなど多様である。ある70代半ばのビジネスリーダーに言われたことがある。50代では1日1時間、60代では2時間、70代では3時間、自分との対話の儀式に時間を使へと。本人は早朝5時に起床、10キロ近く走り、そのあと呼吸法を実践している。車の運転もそのルーティーンの1つでトータル1日3時間はこなしている。
成功体験の年輪を重ねると傲慢になってくるのは人の性のようだ。自分との対話を通じて、この傲慢さと向き合い自らを律することが成功を重ねるとリーダーにはますます必要になってくる。
石川島播磨重工や東芝を再生させ、政界、財界にも睨みを効かせた土光敏夫元経団連会長などは“メザシの土光さん”と愛称がつくほど生活が質素であっただけでなく、毎朝4時に起床、長時間お経を唱えることを日課としていた。これなどは、まさに自分と向き合うためのルーティーンである。
元寇の乱で元軍に勝利した北条時宗が師と仰いだ無学祖元という禅僧が時宗に禅を説いた。
「坐禅堂で型の如く坐禅をするだけが坐禅ではない。いつ、どこでも、自己の身体と口と意(こころ)を整頓することが坐禅である。」
そして、5か条の自己整頓の心得を伝える。
① 外の物ごとに心を奪われず、泰然として自己の信ずる道を守って動くな。
② 外の物ごと貪着(むさぼりこだわる)するな。一方に貪着すると、必ず他の一方の注意を欠く。油断や恐怖はこんなときに起こる。
③ 自己の才知を頼んで、あれこれ策を樹てるな。常時も非常時も平然として、その心を一にしておれば、どんな異変に遭遇しても、霊妙なる作略が生まれるものだ。
④ 心の見る物量を拡大せよ。心の視界が狭小だと、胆量もまた自然に小量になるから、心で思うことを拡大せよ。
⑤ 勇気を持て。勇猛の心意気はよく白刃をも踏む。反対に柔懦(いくじのない)の身体では、窓の隙間風にも耐えられまい。故に常に心身を鍛えよ。
日々の自分との対話のガイドラインとして多くの示唆を与えてくれる。
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