2011年4月29日金曜日

グローバル化するコミュニケーション(前編)(コミュニケーション百景 第8回)

グローバル化が加速する中で、日本のコミュニケーションのあり方が大きく変わろうとしている。

コミュニケーションの黒船来襲である。

従来の日本のコミュニケーションのあり方は、「波風を立てない」ということがその根底にある。

これは「ホンネとタテマエ」という日本独特の思考プロセスに起因している。

オモテのコミュニケーションとウラのコミュニケーションである。

日本の組織風土では、まずウラのコミュニケーションとして、根回しを関係者に行い、大体「落としどころ」が見極められてから、オモテのコミュニケーションである正式な会議で「落としどころ」が確認される。

これは、会議では「波風を立てない」という暗黙の了解に基づいておこなわれる。

程度の差はあるにせよ、日本的組織では共通するコミュニケーションのあり方である。

一方、グローバル的に見たコミュニケーションの主流は、逆に「波風を立てる」やり方である。

敢えて波風を立てるような強いメッセージを発信することによって、自己のポジショニングをより明確に主張する。

そこからの反動を利用して、自らのメッセージ性を更に高める。

そして、最初からオモテの世界で勝負をする。

日本的コミュニケーションとグローバル的コミュニケーションを「プロレス」対「K1」
の構図に喩えた人がいた。

「プロレス」は血を流しながら双方とも戦うが、どこかに「落としどころ」を探り
ながら闘う。この「探り合い」は観客には見えない。つまり、見える部分と見えない
部分の妙がある。ところが、K1は「落としどころ」などは考えない。

とにかく、観客の目の前で相手を実際に叩き潰す。見える部分での勝敗しか認めない。(つづく)

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka

2011年4月27日水曜日

日本のコミュニケーションは、どこが違うのか(コミュニケーション百景* 第7回)

今回のブログは、今までのツイートの中からコミュニケーションに関するものについて、語り尽くせなかったものを書き込んで行きたいと思います。
 @shintanaka 3月11日 8:19 のツイート 
日本のグローバル戦略は未だ現地最適が基本。現地日本人駐在者による関東軍方式。これからは現地最適とグローバル最適を分けること肝要。ヒト・カネ・コミュニケーションはグローバル最適。特にネットの時代、コミュニケーションのグローバル最適は必須。本社のグローバル広報機能強化は不可欠。
‎80年代、「米国ホンダ」という関東軍のメンバーだった。日本に何がわかる!アメリカのことはアメリカで仕切る!と当時は息巻いていった。本社無視の姿勢。当時はネットがなかった。コミュニケーション上の問題が発生した場合、アメリカだけで完結できた。

今は違う。この前のトヨタのリコールが良い例である。トヨタは6ヶ月動かなかった。北米だけで対応出来ると思っていた。

これからはコミュニケーションに関しては日本本社で仕切ることが重要になってくる。

本社で戦略グローバル広報の機能を強化する時代になる。
 @shintanaka 3月26日 9:28のツイート 
コミュニケーションで最も厄介な相手は自分。「我思う、ゆえに我あり」デカルトの言葉。我思うところが始末が悪い。碌でもない事を考えるのが人間。考えれば考える程に誇大妄想の世界。結果何事も起きない。解決策、とにかく動く。心や意識はあとからと割切る覚悟。自分とのコミュニケーションの要諦。
人間は妄想する動物。思考することと妄想することとの境界線があまり明確でない。

思考していると思っていることが、実は妄想であることしばしば起こる。

ここが怖い。

これに呪縛される。

大いに悩む。

かなり悲観的になる。

怖くなって動きが取れなくなる。

ここがヤバイ。

人間は基本的に弱く、怠け者。ほって置くと、この妄想に喰われてしまう。

この妄想地獄から抜け出すには、小さくてもいいので、とにかく動くこと、何らかの行動をとること。

そこから何かが見えてくる。すると、そこに妄想ではなく、思考が、意識がついてくる。

これ結構、本質的な真理。
 @shintanaka 3月26日 9:35 のツイート 
ボケと突っ込みは日本のコミュニケーションの強かさ。ボケることによって一旦相手の土俵にのる。乗ってくれたと相手が安心した所を突っ込む。欧米流は相手を土俵に乗せようと躍起になる。お互いが張り合う。対立を生む。関西人の方が関東人よりコミュニケーション巧者。対立を生まない日本流の妙味。
土俵の奪い合いが欧米のコミュニケーションの本質。

そこには是非の構造がある。こちらが是で相手が非。

こちらが正しいという前提で相手を説得する。

説得のコミュニケーション。

デイベートがいい例である。一神教的な発想で、対立を前提としている。

日本の場合は納得のコミュニケーション。

相手との折り合いをつけられる落とし所を探す。

よって相手の土俵に一旦乗ってしまう。

相手が呆気に取られているうちに攻めるというやり方。これがボケと突っ込みである。

多様性に対する寛容な態度、自分の考えに固執しない柔軟性が日本のコミュニケーションの強み。

日本人は主張がないとか、優柔不断だとか、ハッキリしないなどと批判されるが、気にすることは全くない。

多様性と柔軟性を兼ね備えた日本のコミュニケーションがこれからますます世界で求められてくる。

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
 
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

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2011年4月25日月曜日

信長と銭2(コミュニケーション百景* 第6回)

(からの続き)通常、「銭」は戦場の旗印に似つかわしくない。

当時はカネより兵力、武力で合戦に勝つという考え方が基本であったし、武田信玄の「風林火山」の馬印、あるいは徳川家康の「厭離穢土 欣求浄土」の軍旗に見られるように、旗印や馬印はその軍団の哲学、信仰などを表すのが一般的であった。

唯一、信州真田家が旗印に六紋銭を使用していたが、これは人間が死後「六道」の迷界のいずれかに生まれ変わるため、その入り口で一文づつ木戸銭を払うという輪廻の考え方、そして人間の殺生という罪を救ってもらえるという地蔵信仰の考え方が原点にある。しかし信長の永楽銭には、そうした仏教的色彩はない。

信長が見据えていたもの、それは一つには、永楽銭が経済の基本であり、それがあれば鉄砲、傭兵、米の調達、公家の懐柔まで何でも出来る、「銭」こそが天下をとる上で最も必要な手段であるという概念であるが、それだけではない。

永楽銭の旗印の持つ象徴的な意味は、

1)新し物好きの信長独特の、人々の意表を突く手段としての意味合いとともに、

2)「銭」を介在とする経済、商業がこれからの戦を支配するという、新時代の幕開けを敵にも味方にも知らしめ、自らその旗手となることを宣言しつつ、

3)当時ニッポンで唯一全国津々浦々まで通用する永楽銭をシンボルとすることがすなわち、自分の錦の御旗が全国に通用するという意識、信長の力が全国に行き渡り、信長こそが天下に号令するという認識をつくる事に繋がる、

そうした意味までもが含まれていたのではないか。

つまり、今日でいえば携帯電話あるいはウィンドウズのように、非常に便利で、世界中どこでも通用し、皆が価値を認めているデファクトスタンダードを支配する、さらにはそうしたデファクトスタンダードになるのが信長である、という意識である。

こうしてみると、信長が永楽銭の旗印を持って行おうとしたことは、人々の価値観を抜本的に変える、「意識改革」までもが含まれていることが分かる。

私がかつて学んだビジネススクールでは、

リーダーシップの3要素として
「先のビジョンを示し、それに向けて人々を方向づけ、モチベートしていく」
ことを学んだが、信長は戦国武将の中で混沌の時代にいち早く「銭」の価値に目を付け、この先のどういう時代が来るのかを「銭」によって人々に示し、そして「銭」を獲得すべく家臣団を動機づけていった、変革期のリーダーにふさわしいリーダーシップを発揮した存在であったのではなかろうか。

いま日本経済は景気低迷、株価も底割れし、混沌として先が見えない状況といわれるが、「銭」にいち早く目を付けた信長のようなビジネスリーダーの登場が一日も早く望まれることだけは間違いない。

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

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田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
 
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
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2011年4月22日金曜日

信長と銭1(コミュニケーション百景* 第5回)

信長と「銭」- この一見奇異な組み合わせは、信長を知る上で欠かせないキーワードのひとつである。

信長こそが、あるいは信長だけが、並居る戦国大名の中でただ一人「銭」に目をつけ、経済至上主義の時代の到来を予想しそれをいち早く人々に知らしめた。

それによって、天下布武への階段を誰よりも速く駆け上がる事ができたのであるが、実は我々現代人にとっても、このキーワードは極めて大きな意味を持つのである。

天正3年5月21日早朝、最強を謳われた武田騎馬軍団を率いる武田勝頼は、父信玄でさえ落とせなかった高天神城を陥落させ、長篠の設楽原において、織田・徳川連合軍と対峙した。

山県昌景を先方に突撃する武田軍に対し、織田・徳川軍の鉄砲3000丁(一説によると1000丁)が火を吹く…… 。

「長篠合戦図屏風」に描かれる織田本陣の図を見ると、「銭」をあしらった信長軍の旗が幾つも林立していることに気付く。

信長の旗印は、当時明からの渡来銭として日本全国で広く流通していた「永楽銭」である。

永楽銭はもともと「根本渡唐銭」と呼ばれ、明から輸入された銭貨である。

中世日本では、国家が独自に銭貨を鋳造する事が無く、12世紀より既に貿易を通じて流入した主に中国渡来銭が通貨として流通していた。

この背景は中国銭が「唐物」であることの価値と信用に加え、貿易や交易において中国銭が交換媒体として高い機能を持つと認識されたことにあると思われる。

なお信長はこの永楽銭を旗印だけでなく、刀のつばにもデザインとして使用している。

織田家の代々の家紋は木瓜紋であるが、信長が自分のシンボルとしてあえて使用したのがこの「銭」である。

(つづく)

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています

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田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
 
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
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2011年4月20日水曜日

ロビイング、熾烈な情報戦(後篇)(戦略コミュニケーションの温故知新* 第11回)

前回からの続き)

更にアメリカ勢は自主規制の枠そのものを引き下げるべく強力にロビイング活動を展開してきた。

この様な事態の中、従来の情報収集中心のワシントンの活動を見直す必要が出てきた。

一方、現地生産でかなり先行していたホンダにとっては別の課題が浮上してきた。

車を輸入、アメリカの市場で販売するだけの事業であれば、基本的にステークホルダー(利害関係)はユーザーと販売店である。

ところが現地生産を開始すると状況は一変する。

今までとは違うステークホルダーが出現する。

まずは従業員である。生産となると数千単位で数が増える。数が増えるだけではない。

従来の販売スタッフはホワイトカラーだが、工場となるとブルーカラーである。

しかも組合のターゲットになり、組合化のための激しい攻撃に晒される。

そして最大の課題は日本人でないアメリカの工場従業員にホンダの生産方式とその背後にあるホンダ哲学をるしっかりと習得してもらえるかである。

それが担保出来ないと日本製と同等の品質がつくり込めない。

大規模な人数のアメリカ人労働者を使う経験も初めてである。

*「戦略コミュニケーションの温故知新」。このシリーズでは一度、原点回帰という意味で私のコミュニケーションの系譜を振り返り、整理し、そこから新たな発想を得ることが狙いです。コミュニケーションの妙なるところが伝えられれば幸いだと考えます。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
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2011年4月18日月曜日

ロビイング、熾烈な情報戦(前篇)(戦略コミュニケーションの温故知新* 第10回)

(前回はこちらから)

広義のロビイングから考えると、当時のホンダのワシントン事務所はどちらかと言うと情報収集が中心であった。

情報収集といっても排ガス規制、安全基準など自動車は様々な規制や基準を満たすことが求められており、これらの情報を適宜入手、車の研究・開発につなげることは必要不可欠であった。

トヨタ、日産が有名ロビイストを採用、ホンダよりも積極的に活動していたが、それでも日米間の自主規制交渉の動向をロビイストを使って探ると言った情報収集のレベルを超えるものではなかった。

状況が変わってきたのは、日本勢が現地生産拡大に本腰を入れ始めてからである。

現地生産ではホンダが先行していた。

1979年には、オハイオ州メアリーズ・ビル工場で二輪車の生産を開始、四輪車は1982年に生産をスタートさせていた。

Big3(GM,Ford,Chrysler)や組合であるUAWなどのアメリカ勢からすれば、折角、日米間の自主規制によって日本車の輸入を制限したのに、現地生産をやられては元も子もない。

そこで現地調達率法案という米国部品の比率が75%に満たない日本車はアメリカで生産されても輸入車扱いとなる内容の法案を議会に提出してきた。

これは日本勢にとってはたまったものではない。

せっかく苦労して現地で車を生産しても、輸入車として扱われてしまっては、自主規制の枠内に入ってしまう。

現地生産をふやせば、日本からの輸入を減らさざるを得ない。

日本車のアメリカ市場での人気は凄まじく、高いプレミアムがつくほど需給が逼迫している。

車を供給さえ出来れば売れるのである。

現地生産分が追加供給にならないと米国での事業戦略の大幅な見直しを迫られることになる。(つづく)

*「戦略コミュニケーションの温故知新」。このシリーズでは一度、原点回帰という意味で私のコミュニケーションの系譜を振り返り、整理し、そこから新たな発想を得ることが狙いです。コミュニケーションの妙なるところが伝えられれば幸いだと考えます。(前回はこちらから)

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長
1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
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2011年4月16日土曜日

有事に求められるリーダーの”対話力”(戦略コミュニケーションで斬る*第10回)

今回のブログも、今まで震災、原発事故がらみのツイートでは語り尽くせなかったものを書き込んで行きたいと思います。
 @shintanaka 3月28日 0:03のツイート 
有事の際の政府の対話力。情報公開だけでは不充分。政府の強い意志を伝える事が肝要。20キロから30キロ圏内自主避難、中途半端なメッセージ。もっとはっきり国民に伝える覚悟も必要。
有事の際の対話力。平時のコミュニケーションは新商品の上市とか、事業戦略の発表、好決算の報告など自ずと情報発信と同時に企業の意志がしっかりと入る。基本的に平時は主張するコミュニケーションである。

ところが有事の場合は、企業の腰が引けて、逃げモードになっている。そのために有事の事態にどう対応するのかという企業の意志が希薄になりがちである。それだけに、平時よりは、もっと強いメッセージを伝える事が重要になる。

中途半端なメッセージは命取りになる。強いメッセージを伝えるトップの判断と覚悟が問われる。
 @shintanaka 3月28日 11:17 のツイート 
課題の共有によって、人々の意識や気持ちがひとつになる兆しあり。与野党の動きに注目。政治がその芽を潰すこと許されない。政治の責任は大きい。政治の使命は国民の課題を先取り、明確に提示、その課題共有をはかり、それをテコに国民を結束させること。戦略コミュニケーションの発想が求められる。
人々の意識を一つの方向にベクトルを合わせるのが課題の共有である。共有できる課題の設計とその認識の普及が戦略コミュニケーションの大きな仕事のひとつである。被災地救済という課題が日本人を結束させた。

これからは被災地復旧という課題解決に向けて皆んなの意識をひとつにする。政治の責任が大きい。

政治の使命は国民の課題を先取り、明確に提示、その課題共有をはかり、それをテコに国民を結束させること。

戦略コミュニケーションの発想が求められる。与野党の動きに注目。せっかく一つの方向に人々の意識や気持ちが向かう兆し。

政治がその芽を潰すこと許されない。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。(前回の「戦略コミュニケーションで斬る」はこちらから)

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

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2011年4月15日金曜日

“広報官”と”報道官”の三つの違い(戦略コミュニケーションで斬る*第9回)

今回のブログは、今まで震災、原発事故がらみのツイートでは語り尽くせなかったものを書き込んで行きたいと思います。
 @shintanaka 3月27日 12:50のツイート 
意識しないコミュニケーションは危険。コミュニケーション力の怖さは意識しなくても作動する。結果、相手が想定外の反応。意識するにはまず何のためにコミュニケーションをしているのか、目的意識を持つ。東電やみずほの会見、日本のリーダーが日頃からコミュニケーションを意識していない事一目瞭然。

コミュニケーションを日頃から意識する事は重要。武力、財力、権力などの他のチカラと違って、コミュニケーションは意識しなくても作動してしまう力。気がつかないうちに、相手がこちらから何らかのメッセージを勝手に受け取り、反応してしまう。

人間は一人の時以外はメッセージを垂れ流していると考えた方がいい。ましてや、こちらが発する言葉だけではない。

目つき、表情、態度などの非言語によって周りの人びとは勝手に色々なメッセージを受け取ってしまう。

ここに自分が発信してしまった事が99%誤解されるか、曲解されるかという世界がでてくる。日常からコミュニケーションを意識する。
 @shintanaka 3月27日 19:01のツイート 
日本では広報官。米国では報道官。何が違う。
①専門度合いが違う。日本は順繰り人事で配置、米国はコミュニケーション専門家を配置。
②意思決定への参画度合いが違う。日本は決まった事を報道、米国は決める過程に参加。
③実践経験度合いが違う。日本は官一筋、アメリカは民間での修羅場経験者。
ホワイトハウスのコミュニケーションスタッフは相当数が大統領選挙のコミュニケーション戦略の策定、実施に携わった人材である。

アメリカの大統領選挙は車のF1グランプリの様なものである。

F1が自動車の最先端技術の場である様に、大統領選挙はコミュニケーションの最先端技術を開発する現場である。

前回の選挙では、オバマのインターネット戦術が注目された。4年に1回ある大統領選挙はアメリカのコミュニケーションのチカラを底上げするインフラと言える。

かたや日本においては、順繰り人事によって広報官に配置される。コミュニケーションにおいては、全くの素人である。

外務省など省庁レベルで広報官をおいているところは局長クラス、首相官邸では審議官、事務次官レベルと高い地位にあった人材がなるがコミュニケーションのプロではない。

その根底にある考え方は「政策がよければ伝わる」、「内容さえしっかり知っていればうまく伝わる」と言ったものである。これはアメリカとは真逆の考えである。

アメリカは「政策がどんなに良くても伝わらない」、「内容をよく知っていてもうまく伝えられない」という考え方をする。伝える技術の専門性を認める土壌が生まれる。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。(前回の「戦略コミュニケーションで斬る」はこちらから)

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
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2011年4月13日水曜日

コミュニケーションの世界で生き抜くための3つの秘訣(後編)(フライシュマンヒラード 朝喝(アサカツ)* 第5回)

(前回からの続き)もちろんデジタルのメリットは効率性です。

それは効果的なコミュニケーションをはかる上で非常に重要です。

しかしながら、「顔を突き合わせて、この話をするのは荷が重い、メールで済ませておこう」とか、あるいは「メールで伝えたからもういいだろう」などと思うときは、

Face to Faceコミュニケーションの精神的な負荷から逃げていると思ってください。

この逃げる姿勢が個々人のコミュニケーション力を劣化させていると自覚することが重要です。

TSさんが
「ソニーは会社の名前ではなく、生き方の名称である」
と話されました。

これを聞いたとき、自分も「ホンダという生き方をしている」と自覚させられました。

TSさんはソニー・スピリットをもって、自分の生き様を実現しています。

それがTSさんの個人としてのブランドになっています。

TSさんの生き方の中にソニー・スピリットという一本の筋がしっかりと通っており、それが強烈なメッセージ、あるいはオーラと言っても良いものを発信しています。

われわれの世界で生き残るには個人のブランドが重要な要素です。

所属する組織のブランド以上に、我々個々人のブランドを確立することがこの道で成功する秘訣です。

自分の生き方に何らかの名称を与えられるような哲学やスピリットを培ってください。

それが習得できればかなり迫力のある立ち位置がつくれ、個人としてのブランドを立てることができるでしょう。

繰り返しますが、

伝えるだけではなく、相手を動かす、そのために追い込んでいくというエンジニアリング発想をもつ。


Face to Faceのコミュニケーションから逃げない。

そして自分の生き方に一本筋を通す、スピリットを培う。

コミュニケーションで飯を喰っていく上で重要です。

心してください。コミュニケーションの世界で生き抜くための秘訣です。

*「フライシュマンヒラードの朝喝(アサカツ)」。このシリーズでは、フライシュマン・ヒラード・ジャパン・グループで毎週行っている社員向けのスピーチの一部を紹介していきます。最新のコミュニケーション・ビジネス事情、心得など社内で話しているテーマを垣間見ることができます。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

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2011年4月11日月曜日

コミュニケーションの世界で生き抜くための3つの秘訣(前編)(フライシュマンヒラード 朝喝(アサカツ)* 第4回)

先週3人の面白い方々と会いました。Tさん、Kさん、TSさんです。

Tさんは大学の学長であると同時に、日本有数のシンクタンクの有識者としても有名です。

Kさんはクライシス・コミュニケーションでは、間違いなく日本No1の方です。

TSさんは長年、ソニーで活躍、その後、アメリカのグローバル企業の日本法人の責任者になるなど日本が誇るビジネス・マンです。

今日は、3名の方々とお会いし、僕なりに感銘を受けた事柄を皆さんとシェアーしたいと思います。

Tさんからは
「プロジェクト・エンジニアリングが重要だ」
という話を聞きました。

何か事を起こすときは、単に責任者や担当者に伝えるだけでなく、しっかりと相手が動いてくれるように周りから仕掛けていくことが重要。

例えば、大臣にこちらの意を伝えるだけではなく、その大臣がその役割を担ってくれるよう周りから様々な方法でfollowする努力が必要。

これがプロジェクトを実現させるためのエンジニアリングであると説かれていました。

コミュニケーションの仕事もこのプロジェクト・エンジニアリングという考え方は重要です。

相手に伝えるだけでなく、確実に相手が動くよう周りから仕掛ける発想を持つことです。

コミュニケーションの目的は相手に伝えることだけではありません。

納得によって相手を動かし、目的を実現することです。

事を起こさずして、我々の仕事は成り立ちません。

Kさんからは印象的な言葉を聞きました。
「PRの本質は“アナログ”」。
コミュニケーションというものは、相手とどうインターフェースをとるかで2種類のものがあります。

1つは接触型で基本的にはFace to Faceのコミュニケーションです。

もう1つは非接触型で一番代表的なのはメールです。

Kさんがアナログと言ったのは、このFace to Faceのコミュニケーションのことです。

顔を付き合わせたコミュニケーションはメールなどの非接触型に比べると精神的な負荷(痛み)を伴います。

デジタルであるネットが発達すると、精神的な負荷の少ないメールなどの非接触のコミュニケーションに頼る傾向が出てきます。

言い換えればアナログ的なコミュニケーションから逃げているのです。(つづく)

*「フライシュマンヒラードの朝喝(アサカツ)」。このシリーズでは、フライシュマン・ヒラード・ジャパン・グループで毎週行っている社員向けのスピーチの一部を紹介していきます。最新のコミュニケーション・ビジネス事情、心得など社内で話しているテーマを垣間見ることができます。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
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2011年4月9日土曜日

“クライシス対応”は世界の常識、”ぶら下がり会見”は世界の非常識(戦略コミュニケーションで斬る*第8回)

今回のブログも、今までの震災、原発事故がらみのツイートでは語り尽くせなかったものを書き込んで行きたいと思います。
 @shintanaka 3月26日 8:45のツイート 
みずほ銀行、三日遅れの記者会見。震災や原発で影に隠れるも、これも国民的クライシス。会見でのトップの発言、姿勢、情けなくなる。クライシス対応はトップの専権事項。人頭指揮の覚悟と姿勢を示すのが世界の常識。日本では副社長など次席に任せ、自ら「出張る」意識希薄。
トヨタのリコールの問題でも、初めの6ヶ月、トップの姿はなかった。
 
豊田社長が陣頭指揮を取り始めてやっと、トヨタ、リコール問題で反転攻勢、終息の方向に動きが始めた。
 
トヨタでさえもトップのクライシスに対する意識が希薄であった。他の日本企業などは推しって知るべしである。

トヨタのリコール問題は、日本に対して大きな警鐘を鳴らした。

クライシス対応はトップの専権事項。これ世界の常識。

東電、みずほ銀行のトップの姿はを見るにつけ、学習能力の無さに憤慨。
 @shintanaka 3月26日 9:01のツイート 
菅首相、震災後、ぶら下がり拒否とマスコミが批判。この意識が日本をダメにする。一日に一回、マスコミに晒し、国家元首を安売りしている国など何処にもない。国のレピュテーションに関わる問題。必要に応じて正々堂々と完全公開記者会見を開けば十分。日本のコミュニケーションの品格が問われる。
日本程、元首に尊厳を持たせない国も珍しい。

問題はこれは、日本人の意識の問題ではなく、仕組みの問題。よい例が、首相官邸のぶら下がり会見。首相の発言を安売りしているようなもの。

たちが悪いのは、ぶら下がりによって、首相の失言がどんどん製造され、それを報道することがマスコミの仕事であるという思い込みができていることである。

失言をする方が悪いというが、しっかりと首相に準備させないような、ぶら下がりの仕組みは一国の元首を”いびる”ためのものとしか思えない。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。(前回の「戦略コミュニケーションで斬る」はこちらから)

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka
 

2011年4月7日木曜日

震災復興の覚悟はあるか(戦略コミュニケーションで斬る*第7回)

この度は、東日本大震災について被害に合われた皆様に、謹んでお見舞い申し上げます。

3月11日の震災以来、ブログ発信を停止、かわりに震災や原発事故に関係する事象を観察しながら、戦略コミュニケーションの視点からTwitter発信を行ってきました。今日からTwitterに加え、戦略コミュニケーションの発想をテーマにブログを再開します。

戦略コミュニケーションの発想をなるべく多くの人々や組織に持ってもらう。

結果として日本が強かになる。

これがこのブログの目的です。

「コミュニケーションのチカラで日本を武装する」

このブログのMissionです。

今まで震災、原発事故がらみのツイートでは語り尽くせなかったものを書き込んで行く事から始めたいと思います。

今後ともよろしくお願いします。
 @shintanaka 3月19日 16:33のツイート 
茨城県のホウレン草、福島県の牛乳、食品衛生法の暫定基準値上回る放射線量。官房長官会見、「責任有無よりもまずは国民の安全最優先」という初動メッセージは適切。今後の政府のメッセージ発信注目。クライシス・コミュニケーションの政府の学習能力が問われる。
基準値を超える放射線量がホウレン草や牛乳などに含まれていた事は、震災の被害対応、原発事故への対処に加えて、新たな事態である。よく想定してなかったと批判されるが、クライシスはそもそも想定外のところで起こる。

想定など100%できないからクライシスなのである。

重要なのは想定外のクライシスが発生した時、試行錯誤しながらもどれだけ早く対応する事ができるかである。

さらには想定外の事態であるクライシスに対してどれだけ学習能力を働かせられるかである。

今回はすでに2つの想定外の事態に対応している。これらからどれだけ学べたかである。
まさに政府の学習能力が問われる。
 @shintanaka 3月19日23:47のツイート 
谷垣自民総裁への入閣要請、小沢氏への協力要請、多くの協力を確保すべく動く。クライシス・コミュニケーションの基本。あとは菅首相に政局観を自ら外すだけの意志と覚悟があるか。RT @asahi: 小沢氏・首相会談震災後初、政権への協力約束 http://t.asahi.com/1p6g
挙国一致で震災のクライシスを一刻でも早く終息させるために大連立を組むという考え方は有事コミュニケーションの視点からは正しい。例え相手が競争相手であっても、あらゆる関係者から支持・協力を取付けることによってリーダーシップを発揮する。

この姿勢が強いメッセージを発信する。問題は今回の菅首相の谷垣総裁への入閣要請を多くの人々(民主党も含め)が政局絡みとして捉えていることである。実際に首相の意向も政局観ゼロとは言えないかもしれない。

いずれにせよ、あくまで震災復興の為の時限立法での大連立であることを菅首相がどれだけ確信しているか、その意志の強さと、それを実現する覚悟があるかである。

これが不十分だと自民党にも国民にも見透かされる。

見透かされれば自ら墓穴を掘ることになる。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。(前回の「戦略コミュニケーションで斬る」はこちらから)

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka