2011年6月30日木曜日

菅総理は“〇〇”がお好き??(戦略コミュニケーションで斬る*第19回)

菅総理のコミュニケーションの特徴を一言で言うならば、

「奇策好き」である。

孫子の兵法に
「兵は詭道なり」
とある。

詭道とは人を騙し欺くことである。

能力があっても敵には無能を示し。遠くても敵には近くに見せたり、敵を騙し欺く事が戦いに勝つ鍵を握ると孫子の兵法は説いている。

菅総理は孫子も兵法に基づいてコミュニケーションを図っているのか、勘ぐりたくなる程に、奇策を連発する。

唐突な浜岡原発の停止、辞任発表で不信任決議を回避、自民党参院からの浜田議員一本釣り、脱原発で解散総選挙をほのめかす。

まさに、コミュニケーションの奇策の連発。

ところが、孫子の兵法には
「凡そ戦いは、正を以って合い、奇を以って勝つ」
と云う事が説かれている。

その意味するところは、戦いは先ず正々堂々と正攻法で攻める、そして奇策、奇襲によって勝つ。

言い換えれば奇策、奇襲だけでは勝てない事を強調している。

信長が桶狭間の戦いで奇襲によって今川義元を倒した話は有名。

これが、その後、過大評価され、日本軍の奇襲好き戦法につながる。

太平洋戦争では奇襲の連発で日本軍自らが墓穴を掘る事になる。

どうも菅総理のコミュニケーションは日本軍の轍を踏むことになりそうな雲行き。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka

2011年6月17日金曜日

お知らせ:第16回コミュニケーション技術評価会

2011年6月25日フライシュマン・ヒラード・ジャパン(以下、FHJ)は「第16回コミュニケーション技術評価会」を開催致します。

これはコミュニケーションを技術として捉え、その向上を目的として弊社が年2回実施しているイベントです。

具体的にはFHJのグループ及びグループ企業(グループ:CCW、FHヘルスケア、SMC。グループ企業:ボックスグローバル・ジャパン、ブルーカレント・ジャパン)による半年の間に起きた代表的なケースの紹介と、ご来賓の方々との質疑応答で構成されています。

またこの場で頂いた様々なフィードバックは、FHJとして日々提供させて頂くコンサルティングやサービス開発等に活かしております。

コミュニケーション技術評価会 「3つのこだわり」:
年2回開催される本コミュニケーション技術評価会は今回で16回目をむかえます。


コミュニケーション技術評価会と呼ばれるには3つのこだわりがあります。

① 「コミュニケーションは1つの力である」:力である限り技術として認識する必要があります。ところが諸外国ではコミュニケーションは力であるという認識があることに対し、日本の企業及び日本人はコミュニケーションを余り意識したことがない。そういった面で日本は無防備であると言わざるを得ない。あえて技術という言葉を使うことにより、コミュニケーションを意識するということが1つのこだわりです。

② 右脳左脳に訴えかける:コミュニケーションの力学は技術論だけで片付けられるものではありません。同じ技術であれ、使う人間によって効果は全く変わってくる。つまり、人間的な要素が非常に強いということです。そのような人間的な要素を取り入れた上で、単に技術論に陥らない、右脳左脳両方を取り入れて考えていくことが重要であると考えます。

③ 共感を生む:見せ方にもこだわりがあります。人間は理屈では動かず
、共感によって動く。共感を生み出すために言葉だけではなく、映像、音楽など、あらゆる要素を用いて五感に響くメッセージを発信することが必要と考えています。
以上3つのこだわりを徹底すべく、本会を年2回実施することにより、コミュニケーションという技術を新しい方向に向けていくことを目的としています。


極端にいうと、上記3つのこだわりを用い、本会を1つの映画を見たような感覚を参加された皆様に与えること。あるいは感動、共感を醸成することが非常に重要なポイントとなっています。

そして、今回初めてその一部分を記録し、後日、社外の皆様に向けて公開することになりました。

詳細について、後日お知らせ致します。ご期待下さい!

2011年6月10日金曜日

「国益」に繋がるメッセージ発信~先代ローマ教皇が持つ、相手視点に立つ強さ~(コミュニケーション百景 第16回)

先代のローマ教皇パウロ2世は、教皇として始めてイスラム社会に対して十字軍のイスラム世界への遠征を過去の過ちとして自ら認めた。

このメッセージはキリスト教世界とイスラム教世界の間で大きな障壁となっていた「歴史認識」のギャップを一気に縮めた。

これによりローマ教皇とイスラム教世界との間には新たな関係が生まれ、それを軸にパウロ2世は自らが推奨する平和外交をより効果的に展開することができた。

相手視点に立てるということは“強さ”である。自己視点に立ってしまうということは“弱さ”である。

日本人も日本の国もメッセージ免疫性低下の無自覚症候群に陥いている。その意味での“弱さ”が目立つ。

一方で、繊細なメッセージでも知覚できる能力を日本人や日本は持っている。

本来、日本人は相手視点に立つことに秀でた“気配り”の伝統的なメッセージ感度をもっているのだ。

日本人が育んできたきめ細かなメッセージ感度は多様性のある現実にうまく適応することを今までも可能にしてきた。

コミュニケーションという視点に立った日本的な“強さ”の創造が今、強く求められている。

*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~
田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka

2011年6月8日水曜日

「国益」に繋がるメッセージ発信 ~ドイツはいかにしてEUでの信頼を取り戻したのか~(コミュニケーション百景 第15回)

日本とドイツは第二次大戦の敗戦国として近隣諸国との関係に苦労した国である。

日本が戦後60年経ってもまだ、中国、韓国の国々と関係がギクシャクしているのに対してドイツは今やEUの中心国として位置づけられている。

EUでの強い存在感を背景にイラク戦争への反対表明など超大国米国に対して一定の距離を置くことができる外交を展開している。

ドイツはかって侵略をしたフランスやポーランドとの関係を戦後一早く修復した。

対独戦争で最も大きな被害を受けたといわれるロシアとも関係を強化、それを背景にロシアとEUとをつなぐ役割を積極的に担っている。

ドイツはロシアとEUとをつなぐという役割を通じてEU内での独自の立場を構築するとともに、米国とも対等な立場を保つなどドイツの「国益」に直結した外交を実現してきた。

ドイツの外交力の要は相手視点に立ったメッセージ発信である。

2005年4月16日、17日付仏フィガロ紙にワルシャワのユダヤ人強制居住地区跡の慰霊碑の前でひざまずいて謝罪したブラント独元首相と靖国神社参拝を続ける小泉首相とを対比した記事が掲載された。

ドイツと日本の戦後の隣国への対応の違いを揶揄したものだが、ドイツの戦後の復興は単に経済的なものだけではない。

外交の面でも過去に対する真摯な反省という一貫したメッセージを発信し続けることによって、EUの中心国としての確たる信頼を醸成してきている。
 
*「コミュニケーション百景」。このシリーズのモットーは“コミュニケーションを24時間考える”です。寝ても覚めてもコミュニケーションを考えることを信条にしています。コミュニケーションでいろいろと思いつくことを書き綴っていきたいと思っています。

~~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「
オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka

2011年6月6日月曜日

メッセージ免疫性低下の無自覚症候群(戦略コミュニケーションで斬る*第18回)

最近朝の挨拶しない人が増えている。

こちらから挨拶をして始めてびっくりした様に静かに、ちいさく挨拶を返す。

悪気はない。気がつかないだけである。

エレベーターの扉が開くと周りに対して“気配り”をせずに無神経に乗る人、出るひとが増えている。

狭い歩道ですれ違うとき、避ける素振りもせずそのまま闊歩してくる人が結構いる。

周りに対する不注意というよりも周りを“意識していない”周りが“見えていない”と言った方がよい。

周りに対して“気を配る”とはもともと“用心”のためである。

よくアメリカ人は愛想が良いと言われる。見知らぬ人に対しても結構、親しそうに“ハロー”と挨拶をする。

これは基本的に見知らぬ相手への用心からである。

こちらからメッセージを発信し、相手を探る。挨拶だけではない。

言葉に出さなくても人は絶えずメッセージを発信している。

彼女が不機嫌そうであれば、機嫌が直るまで寄り付かないほうが良い。

上司が上機嫌であれば、承認を取るチャンスである。

相手の発信しているメッセージを絶えず読み解くことによって人は相手に対するアプローチを決めている。

「触らぬ神に祟りなし」である。

メッセージを読み解く能力は知覚機能の中でも最も重要な能力である。

“危険”に対する防御能力であると同時に“機会”をものにする攻撃能力でもある。

相手のメッセージを読み取れるかどうかは相手の立場に立てるかどうかの問題である。

人間の社会で対応力とは相手視点に立てるかの能力の問題である。

自己視点でしか物事が見えない人が増えている。

相手の視点で考えることができないという事は相手のメッセージに対して無防備であると言うことである。

メッセージに対する免疫性がない。

相手のメッセージに踊らされる。

メッセージ免疫性低下の無自覚症候群が今確かに日本人の間で広がっている。

*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka

2011年6月3日金曜日

これからの外交、”間接話法”を利用せよ(戦略コミュニケーションで斬る*第17回)

外交は国益を守るための戦略コミュニケーションである。

狭義の外交は各国の外交当局間の外交折衝である。

これは当事者間の直接話法で、各国がその利害を超える事が難しく、強要か譲歩の中で落とし所を模索、妥協点を見つけるプロセスである。

この限界を乗り越える方法として相手の国の世論を味方につけ、その世論をテコに相手国に譲歩を迫る間接話法がある。

中国が北京へのオリンピックの誘致に動き出した際は、米国は天安門事件の絡みから反対の姿勢を貫いていた。

中国はグローバルネットワークを持つ米国のPRファームを採用、米国の世論の味方化をはかる。

結果、ホワイトハウスから北京へのオリンピック誘致に関しては米国は中立な立場をとる旨を発表するまでに持ち込む事に成功する。

これからはますます、間接話法を使った総合外交の時代がくる。

世界が多極化する中で、今後は相手国の世論だけでなく、世界世論を味方につける事が重要になる。その鍵は国際会議である。

しかも、国主導ではない、民間主導のものである。良い例がダボス会議である。

もはや国が主導するサミットでは国際世論をつくる事は難しくなってきている。

民間主導の国際会議には各国首脳だけではない、経済人、学者、文化人、NGOなどが多くの集まる。

ここで醸成された考え方が世界世論を形成する。

これからの総合外交は民主導の国際会議において日本の声(Voice)を確立して行くか、それによって世界世論世論を味方につけるかであう。

更には、日本自らが主催する国際会議をつくる事が、日本の世界における立ち位置をつくるために不可欠である。

フクシマ会議は世界の世論を味方につけるだけでなく、それを引張って行く日本の総合外交の柱になり得る。
*「戦略コミュニケーションで斬る」。このシリーズでは、様々な時事的な事象を捉えて、戦略コミュニケーションの視点から分析、戦略コミュニケーションの発想から世の中を見ていきます。

~~~~~~~~~~~~~~筆者経歴~~~~~~~~~~~~~~~~

田中 慎一
フライシュマン・ヒラード・ジャパン 代表取締役社長

1978年、本田技研工業入社。
83年よりワシントンDCに駐在、米国における政府議会対策、マスコミ対策を担当。1994年~97年にかけ、セガ・エンタープライズの海外事業展開を担当。1997年にフライシュマン・ヒラードに参画し日本オフィスを立ち上げ、代表取締役に就任。日本の戦略コミュニケーション・コンサルタントの第一人者。近著に「オバマ戦略のカラクリ」「破壊者の流儀 不確かな社会を生き抜く”したたかさ”を学ぶ 」(共にアスキー新書)がある。

☆twitterアカウント:@ShinTanaka

2011年6月1日水曜日

【メディア情報】本日6月1日発売の宣伝会議に寄稿させて頂きました。

本日6月1日発売の宣伝会議に寄稿させて頂きました。



巻頭特集「近所の評判から風評被害まで その本質を考える」にて、
戦略コミュニケーションの視点から、3.11以降いかにして日本への信頼を取り戻すか、
海外からの風評被害をいかに克服するかについて考察しました。

是非、ご一読下さい。

巻頭特集/近所の評判から風評被害までその本質を考える 
風評被害のメカニズム

■戦略コミュニケーションの視点 
日本への信頼を取り戻せ 
海外からの風評被害をどう克服するか

-.風評被害は「三つ目のクライシス」
-.海外メディアが過剰反応する背景
-.メッセージのない情報発信はリスク
-.「ブランド構築」視点での風評被害対応は逆効果
-.海外から注目を集めるための「逆転の発想」
-.コミュニケーションを経営戦力にする

(宣伝会議 HP) http://ec.sendenkaigi.com/hanbai/magazine/sendenkaigi/#article_01